本試験は、粉粒状の固体物品の衝撃に対する敏感性を判断することを目的とする。
(1)落球式打撃感度試験装置
(2)鋼球
「玉軸受用鋼球」(JIS B1501-1988)に規定するもので、次の呼び径のもの
① 呼び径 7mm(質量約1.4g)
② 呼び径 40mm(質量約261g)
(3)鋼製ころ
「ころ軸受用ころ」(JIS B1506-1976)に規定する円筒ころで、直径12mm、長さ12mのもの
(注)端面の中心部にぬすみのないもの。ぬすみとは端面の中心部のくぼみをいう。
(4)網ふるい
「標準ふるい」(JIS Z8801-1987)に規定する網ふるいで、次の目開きのもの
① 目開き 1180μm (約 14メッシュ)
② 目開き 300μm (約 50メッシュ)
③ 目開き 180μm (約 83メッシュ)
⑥ 目開き 150μm (約100メッシュ)
(5)研磨紙
「研磨紙」(JIS R6252-1976)に規定するもので、600番のもの
(6)化学はかり
(7)乾操用シリカゲル入りデシケーター
(1)塩素酸カリウム
「塩素酸カリウム(試薬)」(JIS K8207-1961)1級規格適合品
(2)硝酸カリウム
「硝酸カリウム(試薬)」(JIS K8548-1975)特級規格適合品
(3)赤りん
「赤りん(試薬)」(JIS K8595-1961)1級規格適合品
(l)塩素酸カリウム
(2)硝酸カリウム
塩素酸カリウムと同様の手順で所定の粒度のものを採取し、デシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量 200mg
5mg×40回=200mg
(3)赤りん
(1)網ふるい(目開き1.18mm)の下に適当な容器を置き、ふるいの網上に試験物品を置く。
(2)ふるいに振動を与えふるい分け操作を行う。
(注)操作は「化学製品のふるい残分試験法」(JIS KOO69-1966)3.1乾式によるふるい分け方法を参照のこと。
(3)容器にたまった試験物品をデシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量220mg以下
2mg×l0回~2mg×l0回+5mg×40回
(注)試験物品のすべてが網ふるい(目開き1.18mm)を通過する場合には、ふるい分けの操作を行うことなく、そのまま使用できる。
(注)粉砕して試験に供する場合には、粉砕後の大きさは、網ふるい(目開き1.18mm)を通過する最大粒度とする。
乳ばちで粉砕する場合は、衝撃を与えないよう静かにすりつぶすこと。
(1)試験場所は、大気圧下の換気設備のある室内とする。
(2)温度及び湿度の調整
試験装置の周辺の温度及び湿度を次の条件に適合するよう調整する。
ア 温度 20±5℃
イ 湿度 50±10%
(注)試験に要する標準的時間はつぎのとおり
標準物質の50%爆点の測定 0.5時間
試験物品の測定 0.5時間
(3)記録
温度及び湿度は各試験開始直前及び直後に測定し記録する。
(1)試験前の準備
ア 落下高さの設定
標準物質の50%爆点(50%の確率で爆発を起こす高さ)を測定する際の落下高さは1回目を10.0cmとし、爆、不爆の結果により、表1・4に示す落下高さから選択し、変更することになる。したがってあらかじめ、表1・5の数値を目盛した物差を用意しておくと、落下高さの設定が容易に行える。
イ 鋼製ころ等の位置の確認
鋼球を落下させた時、鋼製ころの上面の中心が衝撃点となるよう、あらかじめ鋼球の取付け位置及び鋼球ころを置く位置を決めておく。
落下の高さの常用対数 logH |
落下高さ H (cm) |
台から電磁石下端までの距離 | |
塩素酸カリウム | 硝酸カリウム | ||
2.1 | 125.9 | 129.0 | 131.1 |
2.0 | 100.0 | 103.1 | 105.2 |
1.9 | 79.4 | 82.5 | 84.6 |
1.8 | 63.1 | 66.2 | 68.3 |
1.7 | 50.1 | 53.2 | 55.3 |
1.6 | 39.8 | 42.9 | 45.0 |
1.5 | 31.6 | 34.7 | 36.8 |
1.4 | 25.1 | 28.2 | 30.3 |
1.3 | 20.0 | 23.1 | 25.2 |
1.2 | 15.9 | 19.0 | 21.1 |
1.1 | 12.6 | 15.7 | 17.8 |
1.0 | 10.0 | 13.1 | 15.2 |
0.9 | 7.9 | 11.0 | 13.1 |
0.8 | 6.3 | 9.4 | 11.5 |
0.7 | 5.0 | 8.1 | 10.2 |
0.6 | 4.0 | 7.1 | 9.2 |
0.5 | 3.2 | 6.3 | 8.4 |
0.4 | 2.5 | 5.6 | 7.7 |
0.3 | 2.0 | 5.1 | 7.2 |
0.2 | 1.6 | 4.7 | 6.8 |
0.1 | 1.3 | 4.4 | 6.5 |
(2)塩素酸カリウムの50%爆点の測定
(1回目)
ア 落下高さが10.0cmとなるように電磁石の位置を設定する。
イ あらかじめ決めておいた位置に鋼製ころを置く。
ウ 化学はかり又は計量スプーンで赤りんを2mgはかりとり、鋼製ころの上面の中心に置き、軽くおさえて平にする。
エ 化学はかり又は計量スプーンで塩素酸カリウムを2mgはかりとり、赤りんの上部にふりかける。
オ 鋼製ころを下部の鋼製ころとの位置がずれないよう静かに重ねて置く。
カ 鋼球(直径7mmのもの)をあらかじめ決めておいた位置に取り付ける。
キ 鋼球を落下させ、爆又は不爆の結果を観察し、記録する。
[爆・不爆の判定]
爆発音、火花又は煙を生じた場合を「爆」と判定する。
(2回目)
1回目の結果が
ア 爆の場合はすぐ下の高さ(7.9cm)
イ 不爆の場合はすぐ上の高さ(12.6cm)に落下高さを変更し、1回目と同様の手順により結果を観察し、記録する。
(注)使用した鋼製ころを再使用する場合は、使用した端面を研磨紙で磨いた後、洗浄、乾燥して用いること。(以下同じ。)
(3回目以降)
爆・不爆の結果により、それぞれ落下高さを上下させ、爆から不爆あるいは不爆から爆になった高さを第1回とし、以後第40回まで試験を行い結果を記録する。
(注)3回目落下高さ
ア 7.9cmで ① 爆であれば 6.3cm
② 不爆 〃 10.0cm
イ 12.6cmで ① 爆 〃 10.0cm
② 不爆 〃 15.9cm
logH | H | * | * | 1回 | 2回 | … | 40回 | 爆の回数 | 不爆の回数 |
0.9 | 7.9 | * | * | * | * | * | * | 0 | 3 |
1.0 | 10.0 | * | * | * | × | * | ○ | 4 | 12 |
1.1 | 12.6 | * | * | ○ | * | * | * | 13 | 3 |
1.2 | 15.9 | * | ○ | * | * | * | * | 3 | 1 |
1.3 | 20.0 | ○ | * | * | * | * | * | 1 | 0 |
* | 21 | 19 |
「落球式打撃感度試験における50%爆点の算出法」
1 データ集計表の作成(表1・6参照)
(1)第1欄に試験を行った落高(H)(cm)の常用対数値(logH)を小さい値から順に記入する。
(2)第2欄に第1欄の各落高に対して、その落高で行った落下における爆の回数又は不爆の回数(全落下における発生回数の合計の少ない方を用いる)の合計(n)を記入する。
(3)第3欄に第1欄の最低の落高から順に0,1,2,....(i)を記入する。
(4)第4欄に第1欄の各落高に対してi×nの値を記入する。
(5)第5欄に第1欄の各落高に対してi2×nの値を記入する。
(6)第2欄のn、第4欄のi×n、第5欄のi2×nそれぞれの合計Ns、A、Bを求める。
2 50%爆点(H50)(cm)の算出
次式により算出する。
logH50=C+d(A/Ns±0.5)
ここで、Ns=∑n、 A=∑(i×n)
C:試験を行った最低の落高(i=0に対する落高)の常用対数値
d:logHの間隔
±:nに爆の回数を用いた時は-、不爆の回数を用いたときは+の符号を用いる。
3 logHの標準偏差(S)の算出
次式により算出する。
S=1.62d{(Ns・B-A2)/Ns2+0.029}
ここで、B=∑(i2×n)
4 標準偏差による検定
試験を実施した落下高さの常用対数の差(0.1と規定されている)が3で算出した標準偏差値の0.5倍から2.0倍の範囲に存在していることを確認する。
この範囲からはずれている場合は再試験を行う。
0.5S≦d≦2S
(前出の試験例による50%爆点の算出例)
落下高さの常用対数数値 logH |
不爆の回数 n |
i | i x n | i2 x n |
0.9 | 3 | 0 | 0 | 0 |
1.0 | 12 | 1 | 12 | 12 |
1.1 | 3 | 2 | 6 | 12 |
1.2 | 1 | 3 | 3 | 9 |
1.3 | 0 | 4 | 0 | 0 |
* | Ns = 19 | * | A = 21 | B = 33 |
(注)不爆の合計(19)が爆の合計(21)より少ないので、nは不爆の回数を採用する。
(50%爆点H50の算出)
logH50=0.9+0.1(21/19+0.5)
=0.9+0.1(1.11+0.5)
=1.06
H50=11.5cm
(標準偏差Sの算出)
S=1.62×0.1{(19×33-212)/192+0.029}
=1.62×0.1{0.515+0.029}
=0.088
(標準偏差による検定)
0.088×0.5=0.044 0.088×2=0.176
0.044≦0.1≦0.176 よって、試験は有効である。
(3)硝酸カリウムの50%爆点の測定
(第1回目)
ア 落下高さが10.0cmとなるように電磁石の位置を設定する。
イ あらかじめ決めておいた位置に鋼製ころを置く。
ウ 化学はかり又は計量スプーンで赤りんを5mgはかりとり、鋼製ころの上面の中心に置き、軽くおさえて平にする。
エ 化学はかり又は計量スプーンで硝酸カリウム5mgをはかりとり、赤りんの上部にふりかける。
オ 鋼球(直径40mmのもの)を、あらかじめ決めておいた位置に取付ける。
カ 鋼球を落下させ、爆・不爆の結果を観察し、記録する。
(第2回目以降)
爆・不爆の結果により落下高さを上下させ、40回迄試験を行いその結果を記録し、50%爆点を算出する。
(注)塩素酸カリウムとの場合を参照
(4)塩素酸カリウムとの比較による試験物品の評価
ア 試験物品の試験方法
(ア)落下高さが(2)で算出した50%爆点になるように電磁石の位置を設定する。
(注)台から電磁石下端までの距離=50%爆点+3.1cm
(イ)あらかじめ決めておいた位置に鋼製ころを置く。
(ウ)化学はかり又は計量スプーンで赤りんを2mgはかりとり、鋼製ころの上面の中心に置き、軽くおさえて平にする。
(エ)化学はかり又は計量スプーンで試験物品を2mgはかりとり、赤りんの上部にふりかける。
(オ)鋼製ころを下部の鋼製ころとの位置がずれないよう静かに重ねて置く。
(カ)鋼球(直径7mmのもの)をあらかじめ決めておいた位置にとりつける。
(キ)鋼球を落下させ、爆又は不爆の結果を観察し、記録する。
(ク)(ア)から(キ)までの操作を合計10回繰り返す。
(ケ)(ク)で行なう10回の測定において爆と不爆の両方が生じた場合には、(ア)から(キ)までの操作をさらに30回(合計40回)繰り返す。
イ 結果の評価
(ア)10回の測定において全て「爆」が生じた場合には、「ランク①」と評価する。
(イ)10回の測定において「爆」及び「不爆」の両方が生じ、さらに30回測定を行なった場合には、合計40回の測定の結果により次のように評価する。
① 40回中「爆」が生じた回数が20回以上の場合 「ランク①」
② 〃 20回未満の場合 「ラソク②」
(ウ)10回の測定において全て「不爆」が生じた場合には、硝酸カリウムとの比較試験を行い評価する。
(5)硝酸カリウムとの比較による試験物品の評価
ア 試験物品の試験方法
(ア)落下高さが(3)で算出した50%爆点になるように、電磁石の位置を設定する。
(注)台から電磁石下端までの距離=50%爆点+5.2cm
(イ)あらかじめ決めておいた位置に鋼製ころを置く。
(ウ)化学はかり又は計量スプーンで赤りんを5mgはかりとり、鋼製ころの上面の中心に置き、軽くおさえて平にする。
(エ)化学はかり又は計量スプーンで試験物品を5mgはかりとり、赤りんの上部にふりかける。
(オ)鋼球(直径40mmのもの)をあらかじめ決めておいた位置に取付ける。
(カ)鋼球を落下させ、爆又は不爆の結果を観察し、記録する。
(キ)(ア)から(カ)までの操作を合計10回繰り返す。
(ク)(キ)で行なう10回の測定において爆と不爆の両方が生じた場合には、(ア)から(カ)までの操作をさらに30回(合計40回)繰り返す。
イ 結果の評価
(ア)10回の抑定において全て「爆」が生じた場合には、「ランク②」と評価する。
(イ)10回の測定において「爆」及び「不爆」の両方が生じ、さらに30回測定を行なった場合には、合計40回の測定の結果により次のように評価する。
① 40回中「爆」が生じた回数が20回以上の場合 「ラソク②」
② 〃 20回未満の場合 「ラソク③」
(ウ)10回の測定において全て「不爆」が生じた場合には、「ラソク③」と評価する。