第2章第1節の2
2 燃焼試験
2.1 試験の日的
本試験は、粉粒状の固体物品の酸化力の潜在的な危険性を判断することを目的とする。
2.2 装置及び器具
(1)点火器具
直径2mmのニクロム線を円輪状としたもので、通電により約1,000℃に加熱できるもの
(注)円輪の直径は2.7(1)試験前の準備を参照のこと。
(2)円錐カッブ
カップの高さと底面の直径の比が1:1.75であるもの
(注)カップの大きさは2.7(1)試験前の準備を参照のこと。
(3)無機質断熱板
厚さが10mm以上であって、0℃における熱伝導率が86cal/m・hr・℃以下のもの
(4)網ふるい
「標準ふるい」(JIS Z8801-1987)に規定する網ふるいで、次の目開きのもの
① 目開き 1.18mm (約 14メッシュ)
② 目開き 500μm (約 30メッシュ)
③ 目開き 300μm (約 50メッシュ)
④ 目開き 250μm (約 60メッシュ)
⑤ 目開き 150μm (約100メッシュ)
(5)光高温計又は放射温度計
(6)風速計
(7)乾燥用シリカゲル入りデシケーター
(8)メスシリンダー
(9)化学はかり
(10)ストップウオッチ
写真1・1 試験器具
(注)燃焼試験装置(燃焼室)について
燃焼試験装置については特段の規定はないが、試験環境条件の調整、燃焼ガスの処理、試験実施上の安全対策等を考慮すると、写真1・2のような燃焼試験装置(燃焼室)内で試験を行うことが望ましい。
2.3 標準物質及び木紛
(1)臭素酸カリウム
「臭素酸カリウム(試薬)」(JISK8530-1961)1級規格適合品
(2)過塩素酸カリウム
「過塩素酸カリウム(試薬)」(JISK8226-1986)特級規格適合品
(3)木紛
日本杉の辺材から製造したもの
2.4 標準物質及び木粉の調整
(1)臭素酸カリウム
ア 網ふるい(目開き150μm)の上に網ふるい(目開き300μm)を重ね、上部ふるいの網上に臭素酸カリウムを置く。
イ ふるいに振動を与え、ふるい分け操作を行う。
(注)操作は「化学製品のふるい残分試験法」(JIS K0069-1966)3.1乾式によるふるい分け方法を参照のこと。
ウ 下部ふるいの網上に残った臭素酸カリウムを適当な容器(シャーレ等)に採り、デシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量 75g
(30g×0.5)×5回=75g (注)乳ばちで粉砕する場合は衝撃を与えないよう静かにすりつぶすこと
(2)過塩素酸カリウム
臭素酸カリウムと同様の手順で所定の粒度のものを採取し、デシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量 75g
(30g×0.5)×5回=75g
(3)木粉
ア 網ふるい(目開き250μm)の上に網ふるい(目開き500μm)を重ね、上部ふるいの網上に木粉を置く。
イ ふるいに振動を与え、ふるい分け操作を行う。
(注)操作は「化学製品のふるい残分試験法」(JIS KOO69-1966)3. 1乾式によるふるい分け方法を参照のこと。
ウ 下部ふるいの網上に残った木粉を適当な容器(シャーレ等)に採り、乾燥器内で105℃、4時間乾燥する。
エ 乾燥後、デシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量 255g
・標準物質用 (30g×0.5)×5回×2=150g
・試験物品用 (30g×0.5)×5回+(30g×0.2)×5回=105g
2.5 試験物品の調整
(1)網ふるい(目開き1.18mm)の下に適当な容器を置き、ふるいの網上に試験物品を置く。
(2)ふるいに振動を与えふるい分け操作を行う。
(注)操作は「化学製品のふるい残分試験法」(JIS K0069-1966)3.1乾式によるふるい分け方法を参照のこと。
(3)容器にたまった試験物品をデシケーター中に温度20±5℃で24時間以上保存する。
(注)1回の試験に必要な標準使用量 195g
(30g×O.5)×5回+(30g×0.8)×5回=195g
(注)試験物品のすべてが網ふるい(目開き1.18mm)を通過する場合には、ふるい分けの操作を行うことなく、そのまま使用できる。
(注)粉砕して試験に供する場合には、粉砕後の大きさは、網ふるい(目開き1.18mm)を通過する最大粒度とする。
乳ばちで粉砕する場合は衝撃を与えないよう静かにすりつぶすこと。
2.6 試験場所
(1)試験場所は、大気圧下の換気設備のある室内とする。
(2)温度及び湿度の調整
無機質断熱板の周辺の温度及び湿度を、次の条件に適合するよう調整する。
ア 温度 20±5℃
イ 湿度 50±10%
(注)試験に要する標準的時間は、次のとおりである。
標準物質と木粉との混合物の燃焼時間の測定 1時間
試験物品と木粉との混合物の燃焼時間の測定 1時間
(3)風速の確認
燃焼ガスの排気を行う場合は無機質断熱板の風上において、風の流れと平行に測定した風速が0.5m/sec以下であることを確認する。
(注)風速の測定は、熱線型風速計、熱式風速計等を用いるとよい。
(4)記録
温度及び湿度並びに排気を行う場合の風速は、各試験開始直前直後、各1回測定し、記録する。
2.7 試験方法
(1)試験前の準備
ア 円錐カップの作成
(ア)準物質と木粉の混合物(重量比1:1)及び試験物品と木粉の混合物(重量比1:1及び4:1)30gの容量(Ⅴ)をメスシリンダーで確認する。
(イ)それぞれの容量について、次式によりCを算出し、適当な厚さの紙で円錐カップを作成する。
(注)計算によらなくとも表1・3より(ア)の容量より大きめのものを選び混合物を充填し、余分の部分を切取って作成できる。
表1・3 円錐カップ作成表
容量 V (
cm3
)
9.2
14.6
21.8
31.0
42.5
56.6
73.4
93.4
116.6
C (cm)
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
6.5
7.0
イ 円輪状ニクロム線の内径の決定
(2)臭素酸カリウム及び過塩素酸カリウムと木粉の混合物の燃焼時間の測定
ア 燃焼状態の判断及び燃焼時間
(ア)燃焼状態の判断
燃焼とは「発炎が継続する状態(間欠的に継続する状態を含む。)」をいい、次の場合は燃焼とはしない。(不燃と判断する。)
① 着火後消炎し、くん焼又は発煙状態に移行して木粉の炭化が進行する場合
② 消炎後直ちに堆積の状態を観察し、堆積の内部又は着火位置の上部に木粉が燃焼せずに残存する場合
(注)消炎後の状態は必ずしも完全に灰状とはならず、炭化状態の残存が見られる。
標準物質の残存状態を十分観察し、判断すること。
(イ)燃焼時間
燃焼時間とは、円錐形の堆積の基部の全周が着火してから、発炎しなくなるまでの 時間(間欠燃焼の場合は最初の発炎から最後の発炎が終了するまでの時間)をいう。
イ 試験方法
(ア)臭素酸カリウム(又は過塩素酸カリウム)15gと木粉15gを適当な容器にはかりとり、十分均一となるよう混合する。
(イ)あらかじめ用意をした円錐カップに混合物を入れ、無機質断熱板を上に置き、これを逆さにした後円錐カップを除き、無機質断熱板上に円錐形堆積を作る。
(ウ)無機質断熱板上の堆積は試験場所に1時間放置する。
(注)試験場所は、2.6試験場所に規定した条件に調整されていること。
(エ)点火器具に所定の内径の円輪状ニクロム線を装着し、通電して約1,000℃に加熱する。
(注)温度の測定は、光高温計又は放射温度計で行う。
(オ)ニクロム線を堆積の点火位置(底面からの距離が円錐の高さの20%以下の部分)当該基部の全周が着火するまで接触させる。この場合において、点火源の当該基部への接触時間は10秒までとする。
(注)10秒以内に着火発炎しない場合は「不燃」とする。
(カ)全周に着火し発炎を生じた場合は直ちにニクロム線を離して接触を断つと同時に、ストップウオッチで燃焼時間を測定し、記録する。
(キ)堆積の残存状態を観察し、木粉が完全に燃焼したことを確認する。
(注)完全に燃焼したことが確認された場合のみ、その燃焼時間を有効な測定値として扱う。
ウ 燃焼時間の算出
(ア)測定は5回行い、その平均値をもって燃焼時間とする。
(イ)再試験
(ア)において、5回の測定値のうち1つでも算出した平均値から±50%の範囲に入らないものがある場合は、あらためて5回の測定を行う。
(3)試験物品と木粉との混合物の燃焼時間の測定
ア 混合重量比1:1の混合物の試験方法
(ア)試験物品15gと木粉15gを適当な容器にはかりとり、十分均一となるように混合する。
(イ)以下、臭素酸カリウムの場合と同様の手順で燃焼時間を算出する。
イ 混合重量比4:1の混合物の試験方法
(ア)試験物品24gと木粉6gを適当な容器にはかりとり、十分均一となるように混合する。
(イ)以下、臭素酸カリウムの場合と同様の手順で燃焼時間を算出する。
ウ ア及びイで得られた燃焼時間のうち短い方を試験物品の燃焼時間とする。
エ 追加試験
5回の試験において、1回でも燃焼時間が測定されなかった場合(「不燃」と判断された場合)は、さらに5回(合計10回)の試験を行い、その結果により、次のように処理する。
(ア)10回中5回以上燃焼時間が測定された場合には、その平均値を燃焼時間とする。
(イ)10回中4回以下しか燃焼時間が測定できなかった場合には、「燃焼しない(不燃)」と判断する。
(注)「不燃」の結果が6回得られた時点で以後の試験を省略し、不燃と判断してさしつかえない。
(注)標準物質の試験においては、通常5回の測定で有効な燃焼時間が得られる。したがって、再試験等の結果が生じた場合は、試験条件等が規定された条件に適合しているかどうかの確認を行う。
2.8 試験結果の評価
(1)試験物品と木粉との混合物の熱焼時間に応じ、次のとおり評価する。
ア 臭素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間以下の場合 ランク①
イ 臭素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間を超え、過塩素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間以下の場合 ランク②
ウ 過塩素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間を超える場合 ランク③
(2)試験物品と木粉との混合物が「不燃」である場合、ランク③と評価する。