化学物質の爆発安全情報データベース

13.4 シリーズ3 タイプ (a) 試験規定

13.4.6 試験3(a)(ⅵ): 打撃感度試験
13.4.6.1 はじめに

この試験は、物質の、落つい打撃に対する感度を測定し、その物質が、試験された状態で輸送するには危険すぎるかどうかを判定するために用いられる。2種類の異なる試験組立部を用いることにより、固体および液体に適用できる。

13.4.6.2 装置および材料

13.4.6.2.1 図 13.4.6.1 に打撃装置の図解を示す。主な構成は次のとおりである:

13.4.6.2.2 試験試料をローラー組立部2(固体用)または3(液体用)にセットする。これらのローラー組立部の寸法および必要条件を、図 13.4.6.2 および図 13.4.6.3 に示す。以下の付加的装置も必要である:

13.4.6.3 手順

13.4.6.3.1 固体

13.4.6.3.1.1 原則として、物質は受け取られた状態で試験する。湿った物質は、輸送に必要な最小量の湿潤剤で試験する。物質の物理的形態により、以下の手順に従う:

固体試料用のローラー組立部はアセトンまたはエチルアルコールで脱脂する。用意された試験組立部は、スリーブとローラーの直径に 0.02-0.03 mm 差があるようにする。規格の範囲内にとどまっていれば、構成部品は再利用できる。

13.4.6.3.1.2 試験される爆発物の最低感度限界を測定するために、質量 100±5 mg の試料を、組立部2の開いたローラーの中のローラー表面に置く。スリーブは、下方の溝の方向に合わせる。2個目のローラーを爆発物試料の上に置き、上のローラーを押しながら回転させることにより平らにする。爆発物を入れた組立部を液圧機の上に置き、圧力 290 MPa で圧縮する。可塑性で、弾性がある糊状の爆発物については、それがローラー表面をはみださないよう、圧力を前もって選択する。ぬれた爆発物は圧縮しない。ローラーと爆発物を取り付けたスリーブをトレーの中へひっくり返して入れ、可能な限りローラーに逆らって押し付ける。これによって爆発物がスリーブの溝と確実に接触できる。爆発物を入れた組立部を打撃装置のアンヴィル上に置く。落つい(10 kg)を落下させ試料に打撃を与える。

13.4.6.3.1.3 爆発物の打撃感度の最低限界は、25回の試行で陽性の結果を出さない 10 kg の鋼製落ついの最大落高として定められる。落高は次の範囲から選ぶ:50, 70, 100, 120, 150, 200, 250, 300, 400, 500 mm。試験は最初 150 mm の落高から始める。ローラーとスリーブ上の音、閃光あるいは燃焼の形跡は、陽性反応とみなされる。試料の色落ちは爆発のサインとはみなされない。この高さで陽性の結果が得られれば、次に低い落高で試験を繰り返す。逆に陰性の結果が得られれば、次に高い落高が用いられる。このようにして 25 回の試行で陽性反応が一度も起こらなければ、10 kg 質量にたいする最大落高が求められる。落高 50 mm で 25 回の試行の間に陽性の結果が得られれば、ローラー組立部2で試験した爆発物の最低感度限界<50 mm と確定する。落高 500 mm で 25 回の試行の間に陽性の結果が得られなければ、ローラー組立部2で試験した爆発物の最低感度限界は 500 mm 以上と表される。

13.4.6.3.2 液体

13.4.6.3.2.1 ローラー組立部 3 をアセトンまたはエチルアルコールで脱脂する。通常 35-40 のローラー組立部を用意する。ローラー組立部はスリーブとローラーの直径に 0.02-0.03 mm の差があるようにする。

13.4.6.3.2.2 最低感度限界を測定するため、液体を滴下チューブまたはピペットでキャップの中に入れる。キャップは下側のローラーの中心に置き、液体を完全に満たす。2番目のローラーを、液体の入ったキャップの上に注意して置き、ローラー組立部を打撃装置アンヴィル上に置いて鋼製落ついを落下させる。結果を記録する。

13.4.6.3.2.3 爆発物打撃感度の最低限界は25回の試行で陽性の結果を出さない 10 kg の鋼製落ついの最大落高として定められる。落高は次の範囲から選ぶ:50, 70, 100, 120, 150, 200, 250, 300, 400, 500 mm。試験は最初 150 mm の落高から始める。この高さで陽性の結果が得られれば、次に低い落高で試験を繰り返す。逆に陰性の結果が得られれば、次に高い落高が用いられる。このようにして 25 回の試行で陽性反応が一度も起こらなければ、10 kg 質量にたいする最大落高が求められる。落高 50 mm で 25 回の試行の間に1回以上陽性の結果が得られれば、ローラー組立部3で試験した爆発物の最低感度限界<50 mm と確定する。落高 500 mm で 25 回の試行の間に陽性の結果が得られなければ、ローラー組立部3で試験した爆発物の最低感度限界は 500 mm 以上と表される。 

13.4.6.4 試験判定基準および結果査定方法

13.4.6.4.1 固体

試験結果は次によって判定される:

組立部2で陽性の結果が得られた最低の高さが 100 mm 未満ならば、試験結果は“+”とみなされ、その物質は試験された形態で輸送するには危険すぎると判断される。組立部2で陽性の結果が得られた最低の高さが 100 mm 以上ならば、結果は“-”とみなされる。

13.4.6.4.2 液体

 試験結果は次によって判定される:

組立部3で陽性の結果が得られた最低の高さが 100 mm 未満ならば、試験結果は“+”とみなされ、その物質は試験された形態で輸送するには危険すぎると判断される。組立部3で陽性の結果が得られた最低の高さが 100 mm 以上ならば、結果は“-”とみなされる。

13.4.6.5 試験結果例

13.4.6.5.1 固体

物質

組立部2での最低限界(mm)

結果
アンモナ-ル (80.5%硝酸アンモニウム、15%トリニトロトルエン、4.5%アルミニウム)
150
-
アンモナ-ル、砕片 (66%硝酸アンモニウム、24%ヘキソゲン、5%アルミニウム)
120
-
アンモナイト 6ZhV (79%硝酸アンモニウム、21%トリニトロトルエン)
200
-
アンモナイト T-19 (61%硝酸アンモニウム、19%トリニトロトルエン、20%塩化ナトリウム)
300
-
シクロトリメチレントリニトロアミン(乾燥)
70
+
シクロトリメチレントリニトロアミン/ワックス 95/5
120
-
シクロトリメチレントリニトロアミン/水 85/15
150
-
グリニュライト AS-8 (91.8% 硝酸アンモニウム、4.2% 機械油、4%アルミニウム)
>500
-
四硝酸ペンタエリスリトール(乾燥)
50
+
四硝酸ペンタエリスリトール/パラフィン 95/5
70
+
四硝酸ペンタエリスリトール/パラフィン 91/10
100
-
四硝酸ペンタエリスリトール/水 75/25
100
-
ピクリン酸
>500
-
テトリル
100
-
トリニトロトルエン
>500
-

13.4.6.5.2 液体

物質
組立部3での最低限界(mm)
結果
ジ-(2,2-ジニトロ-2-フルオロ-エチル)フォーマル/メチレンクロライド 65/35
400
-
硝酸イソプロピル
>500
-
ニトログリセリン
<50
+
ニトロメタン
>500
-

 

図 13.4.6.1: 打撃装置

fig_13_4_6_1


(A) 受け止め・落下装置 (B) 目盛つきスケール
(C) 落つい (D) ガイド支柱
(E) アンヴィル (F) ラック
(G) 跳ね返りを受けるつめ (H) ローラー組立部の拡大図

.

図 13.4.6.2: ローラー組立部2

fig_13_4_6_2


(A)

スリーブ位置“溝が上を向いている”

(B) スリーブ位置“溝が下を向いている”
(C)

HRC硬度63-66のボールベアリング鋼ローラー

(D) HRC硬度63-66の炭素鋼器具のスリーブ
(E) ローラー (F) 試料
(G) スリーブ (H) トレイ

.

図 13.4.6.3: ローラー組立部3

fig_13_4_6_3


(A) ローラー組立部3
(B) 3 ミクロンのニッケルメッキ銅蓋(M2)
(C) ローラー
(D) スリーブ
(E) トレイ
(F) 試料
(G)