この試験は、機械的摩擦刺激に対する物質の敏感性を測定し、その物質が試験した形状で輸送するには危険すぎるかどうかを判断するために用いられる。
13.5.3.2.1 摩擦試験装置の概略を図 13.5.3.1 に示す。装置は、4つの主要な部品から成る:振り子、振り子ホルダー、装置本体および液圧プレス。装置はコンクリート土台に載せる。試験試料の爆薬を取り付けたコロ組立部1を装置本体にセットする。2個のコロの間に置いた試料爆薬を、液圧プレスを使って所定の圧力まで加圧する。振り子重量による打撃を利用して、上方のコロを 試料に沿って1.5 mm 移動させる。
13.5.3.3.1 コロ組立部1はスリーブと2個のコロから成る。その寸法と必要条件を図 13.5.3.2 に示す。
13.5.3.3.1 原則として、物質は入手した形状で試験する。湿状試料は輸送に必要な最小限の湿潤剤の量で試験する。物質は以下の手順に従う:
使用する前に、コロ組立部を脱脂する。仕様書の範囲内であれば、装置を再使用してもよい。
13.5.3.3.2 試料爆薬の下限摩擦感度を測定するために、20 mg の試料を開いたコロ組立部の中に置く。上コロを徐々に押し回し、試料爆薬をコロの間で均一に平らにする。試料爆薬の入ったコロ組立部を装置本体のチャンバーの中に入れ、選択した圧力まで圧縮する。試料爆薬がコロ表面の間で圧縮され、スリーブの上に持ち上げられるように、圧力を保ったままスリーブを下げる。打撃端がコロに触れるように打撃ピンを動かす。打撃ピンを振り子重りで打撃し、上コロと試料間で摩擦を起こす。コロの動きは 1.5 mm である。振り子を離す角度は、試料の維持圧力により、以下の表に従って選択する。25回試験して爆発しない最大維持圧力を得るまで試験を行う。音、閃光または燃焼の痕跡がコロ上にあれば爆発が起こったとみなされる。下限摩擦感度は、25回試験して爆発しない最大維持圧力とみなされる。この圧力は、爆発を起こす圧力とは区別されるが、差は以下の値よりも小さい。
1200 MPa の圧力で 25回試験して爆発が得られなければ、下限摩擦感度は“1200 MPa 以上”と表わされる。30 MPa の圧力で 25回試験して1回以上爆発が得られれば、下限摩擦感度は“30 MPa未満”と表わされる。
コロ移動値を一定にした場合の、試料爆薬の維持圧力と振り子の抛り出し角度の関係
試料爆薬の維持圧力 (MPa) |
振り子の抛り出し角度 (°垂直から) |
試料爆薬の維持圧力 (MPa) |
振り子の抛り出し角度 (°垂直から) |
30 |
28 |
40 |
32 |
50 |
35 |
60 |
38 |
70 |
42 |
80 |
43 |
90 |
46 |
100 |
47 |
120 |
54 |
140 |
58 |
160 |
61 |
180 |
64 |
200 |
67 |
220 |
70 |
240 |
73 |
260 |
76 |
280 |
78 |
300 |
80 |
320 |
82 |
340 |
83 |
360 |
84 |
380 |
85 |
400 |
86 |
450 |
88 |
500 |
91 |
550 |
93 |
600 |
95 |
650 |
97 |
700 |
100 |
750 |
101 |
800 |
103 |
850 |
106 |
900 |
107 |
950 |
108 |
1000 |
110 |
1100 |
115 |
1200 |
118 |
試験結果は以下に基づいて評価する:
もし下限摩擦感度が 200 MPa より小さければ、試験結果は“+”とされ、その物質は試験に供した形状で輸送するには危険すぎると判断される。下限摩擦感度が 200 MPa 以上ならば、試験結果は“-”と判断される。
物質 | 下限圧力 (MPa) |
結果 |
硝酸アンモニウム | 1200 |
- |
アジ化鉛 | 30 |
+ |
PETN(乾燥品) | 150 |
+ |
PETN/パラフィン (95/5) | 350 |
- |
PETN/TNT (90/10) | 350 |
- |
PETN/水 (75/25) | 200 |
- |
ピクリン酸 | 450 |
- |
RDX(乾燥品) | 200 |
- |
RDX/水 (85/15) | 350 |
- |
TATB(トリアミノトリニトロベンゼン) | 900 |
- |
TNT | 600 |
- |
図13.5.3.1: 摩擦試験装置
(A) | トリガー | (B) | 振り子レバー |
(C) | 振り子錘 | (D) | 打撃ピン |
(E) | 打撃ピン用ガイド | (F) | 土台 |
(G) | 圧力計 | (H) | 液圧プレス |
(J) | 装置支持棒 | (K) | 装置本体 |
(L) | コロ組立部スリーブの下降ハンドル | (M) | コロ組立部押さえ |
(N) | スリーブ | (O) | コロ |
(P) | チャンバー | (Q) | 振り子保持器 |
(R) | 振り子保持器支え |
図 13.5.3.2: コロ組立部1
(A) | コロの初めの位置 |
(B) | 試験時のコロの所定位置 |
(C) | HRC 硬度 57-61 の炭素鋼用具のスリーブ |
(D) | HRC 硬度 63-66 のボールベアリング鋼のコロ |
(E) | コロ |
(F) | スリーブ |
(G) | 試験試料 |