この試験は、物質の摩擦刺激に対する感度を測定し、その物質が試験された状態で輸送するには危険すぎるかどうかを判定するために用いられる。
13.5.1.2.1 摩擦装置(図13.5.1.1 参照)は、鋳鋼製の台とその上に取り付けた摩擦装置本体から成る。これは固定された磁製摩擦棒と動く磁製板からできている(13.5.1.2.2 項参照)。磁製板は2つのガイドの間を移動する台座中に置かれる。台座は、連結棒、偏心カム、適切なギアによって電動機に接続しており、磁製板は摩擦棒の下を、距離にして 10 mm、1回だけ往復するように設計されている。荷重装置は磁製棒が交換できるように軸の上を旋回し、重りを吊すための6つの刻み目のついた荷重用腕木で延長されている。荷重 0 は釣り合い重りを調節することにより得られる。荷重装置が磁性板の上に下げられたとき、摩擦棒の縦軸は板に垂直になる。重りは 10 kg まで数種類ある。荷重用腕木には磁性棒の軸から 11 cm, 16 cm, 21 cm, 26 cm, 31 cm, 36 cm の距離にある6つの刻み目が記されている。重りはリングとフックによって荷重用腕木の刻み目に吊される。種々の重りを種々の刻み目で使うと、棒にかかる荷重は 5-10-20-40-60-80-120-160-240-360 N となる。必要に応じて中間の荷重を使うことができる。
13.5.1.2.2 平らな磁性板は工芸用白磁でできており、火に入れる前に2つの摩擦面(粗さ 9-32 ミクロン)をスポンジでこすることにより十分粗くしておく。スポンジの跡ははっきり見えること。円筒状の磁性棒も工芸用白磁であり、粗くした端は丸くしておく。板と棒の寸法を図13.5.1.2 に示す。
13.5.1.3.1 通常は物質を受け入れた状態で試験する。湿性物質は輸送時における湿潤剤の最小含有量で試験する。さらに、ペースト状またはゲル状以外の固体物質では、以下の事項を守らなければならない。
磁性板と磁性棒の表面の各部分は1回しか使用してはならない。各棒の2つの端は2回の試験に使うことができ、板の2つの摩擦面はそれぞれ3回の試験に使用できる。
(注) 複数の成分から成る物質については、篩い分けられた試料は元の試料を代表するものでなければならない。
13.5.1.3.2 磁性板は、そのスポンジ跡の溝が運動方向を横切るように摩擦装置の台座に固定する。供試量は約 10 mm3 で、粉状ならば円筒状の計量器(2.3 mm 径×2.4 mm 深さ)で試料から計り取る。ペースト状またはゲル状物質の場合は、2×10 mm の窓が付いている厚さ 0.5 mm の角形ゲージが使われる。窓は板上で試験される物質で満たし、ゲージを注意深くはずす。固く留められた磁性棒は、図 13.5.1.2 に示すように試料の上に置く。荷重用腕木には必要な重りで荷重をかけ、スイッチを入れる。棒が試料の上に載るように、また磁性板が棒の前で動くときに棒の下に十分な量の試料が来るように注意しなくてはならない。
13.5.1.3.3 一連の試験は荷重が 360 N の1回の試験から始まる。各試験の結果は“無反応”、“分解”(色あるいは臭いの変化)、“爆発”(爆音、破裂、火花、火炎)という言葉で表される。最初の試験で“爆発”の結果が観測されたら、段階的に荷重を下げて“分解”または“無反応”の結果が得られるまで試験を続ける。この摩擦の荷重レベルにおいて“爆発”が起こらなければ、全部で6回まで試験を繰り返す。そうでなければ、6回の試験で一度も“爆発”が起こらない最小荷重が決まるまで、摩擦荷重を段階的に減らす。360 N での最初の試験で“分解”または“無反応”の結果が起これば、さらに5回試験を行う。最高荷重での6回の試験において“分解”または“無反応”の結果が起これば、その物質は摩擦に対して鈍感であるとみなされる。もし“爆発”が起これば、上述のように荷重を減ずる。限界荷重とは、少なくとも6回の試験のうち1回以上の“爆発”結果が起こる最小の荷重である。
試験結果の判定は以下による:
6回の試験で“爆発”が1回起こる最低摩擦荷重が 80 N 未満である場合には、結果は“+”とみなされ、その物質は試験された状態で輸送するには危険すぎると判断される。その他の場合、結果は“-”とみなされる。
物質 | 限界荷重(N) | 結果 |
ブラスチングゼラチン(75% NG) | 80 | - |
ヘキサニトロスチルベン | 240 | - |
HMX(乾燥) | 80 | - |
過塩素酸ヒドラジン(乾燥) | 10 | + |
アジ化鉛(乾燥) | 10 | + |
スチフネート鉛 | 2 | + |
雷こう(乾燥) | 10 | + |
ニトロセルロース 窒素量 13.4%(乾燥) | 240 | - |
オクトール 70/30(乾燥) | 240 | - |
PETN/ワックス(乾燥) | 60 | + |
PETN/ワックス 95/5 | 60 | + |
PETN/ワックス 93/7 | 80 | - |
PETN/ワックス 90/10 | 120 | - |
PETN/水 75/25 | 160 | - |
PETN/乳糖 85/15 | 60 | + |
ピクリン酸(乾燥) | 360 | - |
PDX(乾燥) | 120 | - |
PDX(水湿) | 160 | - |
TNT | 360 | - |
図 13.5.1.1: BAM摩擦試験装置
(A) | つりあい重り |
(B) | 加重用腕木 |
(C) | 台座上に保持される磁性板 |
(D) | 調整棹 |
(E) | 可動台座 |
(F) | 鋼台 |
(G) | 出発位置に台座を固定するためのハンドル |
(H) | 電動機運転方向の指示 |
(J) | スイッチ |
図13.5.1.2: 磁性板と磁性棒
(A) | 磁性棒 直径 10 mm × 15 mm |
(B) | 試験試料 |
(C) | 磁性板 25 × 25× 5 mm |