化学物質の爆発安全情報データベース

18.5 シリーズ8 タイプ(b) 試験規定

18.5.1 試験8(b): ANEギャップ試験
18.5.1.1 はじめに

この試験は、“爆破薬の中間体である硝酸アンモニウムエマルジョン、サスペンジョンまたはゲル”候補の、特定の衝撃レベル、すなわち特定の励爆薬およびギャップに対する感度を測定するために用いられる。

18.5.1.2 装置および材料

18.5.1.2.1 この試験の装置は、爆発性装薬(励爆薬)、バリア(ギャップ)、試験試料(受爆薬)を入れた容器、鋼鉄製証拠板(ターゲット)から成る。

以下の材料が使われる:

  1. 国連標準雷管またはそれと同等のもの
  2. 直径 95 mm、長さ 95 mm、 密度 1600 kg/m3±50 kg/m3 の圧搾 50/50 ペントライト、あるいは 95/5 RDX/WAX ペレット
  3. 鋼鉄製、冷間引き抜き継ぎ目なし、外径 95 mm、肉厚 11.1 mm ±10%、長さ 280 mm で、以下の機械的属性をもつ管:
  4. 鋼管の直径をちょうど下回る直径をもつ試料物質。試料と管壁の間の空気ギャップは、できるだけ小さくすることが望ましい。
  5. 直径 95 m、長さ 70 mm の成型したポリメチルメタクリレート(PMMA)棒。長さ 70 mm のギャップで、使用される励爆薬のタイプに応じて、3.5~4 GPa の衝撃圧力をエマルジョンに加える(表 18.5.1.1 および図 18.5.1.2 を参照)。
  6. 200 mm × 200 mm × 20 mm で、以下の機械的属性をもつ軟鋼板:
  7. 内径 97 mm、長さ 443 mm の段ボール製管
  8. 直径 95 mm、厚さ 25 mm で、雷管を保持するための穴を中央に開けた木製ブロック
18.5.1.3 手順

18.5.1.3.1 図 18.5.1.1 に示すように、雷管、励爆薬、ギャップ、受爆薬は証拠板の中心上方に同軸状に並べる。雷管と励爆薬、励爆薬とギャップ、ギャップと受爆薬がうまく接触するよう注意する。試験試料とブースターは、試験に際し周囲温度にする。

18.5.1.3.2 証拠板の残留物をうまく回収できるように、全装置を水の入った容器の上に置き、水面と証拠板(2つのエッジによってのみ支えられている)の下面の間の空気間隙が 10 cm 以上となるようにする。

18.5.1.3.3 上記に変わる回収方法を用いてもよいが、証拠板の破壊を妨げないよう、証拠板の下には十分な自由空間を設けることが重要である。早期に+の結果が得られなければ、試験は3回行う。

18.5.1.4 試験判定基準および結果査定方法

証拠板にはっきりした孔が開けば、試料中で爆轟が起こったことが示される。ギャップの長さ 70 mm でのいずれかの試験で爆轟した物質は、「爆破薬の中間体である硝酸アンモニウムエマルジョン、サスペンジョンまたはゲル」に分類されず、結果は“+”と表示する。

18.5.1.5 試験結果例
物質 濃度(g/cm3) ギャップ(mm) 結果 コメント
硝酸アンモニウム(低濃度) 0.85 35 - 管破砕(大きな破片)
証拠板曲がる
爆速 2.3-2.8 km/s
硝酸アンモニウム(低濃度) 0.85 35 - 管破砕(大きな破片)
証拠板割れる
ANE-FA
硝酸アンモニウム 69%、硝酸ナトリウム 12%、水 10%、燃料/乳化剤 8%
1.4 50 - 管破砕(大きな破片)
証拠板孔開かず
ANE-FA 1.44 70 - 管破砕(大きな破片)
証拠板孔開かず
ANE-FB
硝酸アンモニウム 70%、硝酸ナトリウム 11%、水 12%、燃料/乳化剤 7%
ca 1.40 70 - 管破砕(大きな破片)
証拠板孔開かず
ANE-FC(鋭感化)
硝酸アンモニウム 75%、水 13%、燃料/乳化剤 10%
1.17 70 管破砕(細かい破片)
証拠板に孔開く
ANE-FD(鋭感化)
硝酸アンモニウム 76%、水 17%、燃料/乳化剤 7%
ca 1.22 70 管破砕(細かい破片)
証拠板に孔開く
ANE- 1
硝酸アンモニウム 76%、水 17%、燃料/乳化剤 7%
1.4 35 - 管は大きな破片になる
証拠板曲がる
爆速: 3.1 km/s
ANE- 2(鋭感化)
硝酸アンモニウム 76%、水 17%、燃料/乳化剤 7%
1.3 35 管は細かい破片になる
証拠板に孔開く
爆速: 6.7 km/s
ANE- 2(鋭感化)
硝酸アンモニウム 76%、水 17%、燃料/乳化剤 7%
1.3 70 管は細かい破片になる
証拠板に孔開く
爆速: 6.2 km/s
ANE-G 1
硝酸アンモニウム 74%、硝酸ナトリウム 1%、水 16%、燃料/乳化剤 9%
1.29 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
爆速: 1968 km/s
ANE-G 2
硝酸アンモニウム 74%、硝酸ナトリウム 3%、水 16%、燃料/乳化剤 7%
1.32 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
ANE-G 3(ガッシングで鋭感化)
硝酸アンモニウム 74%、硝酸ナトリウム 1%、水 16%、燃料/乳化剤 9%
1.17 70 管破砕
証拠板に穴
ANE-G 4(マイクロバルーンで鋭感化)
硝酸アンモニウム 74%、硝酸ナトリウム 3%、水 16%、燃料/乳化剤 7%
1.23 70 管破砕
証拠板に穴
ANE-G 5
硝酸アンモニウム 70%、硝酸ナトリウム 8%、水 16%、燃料/乳化剤 7%
1.41 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
爆速: 2061 km/s
ANE- J 1
硝酸アンモニウム 80%、水 13%、燃料/乳化剤 7%
1.39 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
ANE- J 2
硝酸アンモニウム 76%、水 17%、燃料/乳化剤 7%
1.42 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
ANE-J 4
硝酸アンモニウム 71%、硝酸ナトリウム 11%、水 12%、燃料/乳化剤 6%
1.40 70 - 管破砕
証拠板くぼむ
ANE-J 5(マイクロバルーンで鋭感化)
硝酸アンモニウム 71%、硝酸ナトリウム 5%、水 18%、燃料/乳化剤 6%
1.20 70 + 管破砕
証拠板に孔開く
爆速: 5.7 km/s
ANE-J 6(マイクロバルーンで鋭感化)
硝酸アンモニウム 80%、水 13%、燃料/乳化剤 7%
1.26 70 + 管破砕
証拠板に孔開く
爆速: 6.3 km/s

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図 18.5.1.1 ANEギャップ試験

ANEギャップ試験


(A) 雷管 (B) 励爆薬
(C) PMMA ギャップ (D) 試験試料
(E) 鋼管 (F) 証拠板

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表 18.5.1.1: ANEギャップ試験キャリブレーションデータ

ペントライト 50/50
励爆薬
RDX/ワックス/グラファイト
励爆薬
ギャップ長さ
(mm)
バリア圧力
(GPa)
ギャップ長さ
(mm)
バリア圧力
(GPa)
10 10.67 10 12.53
15 9.31 15 11.55
20 8.31 20 10.63
25 7.58 25 9.76
30 6.91 30 8.94
35 6.34 35 8.18
40 5.94 40 7.46
45 5.56 45 6.79
50 5.18 50 6.16
55 4.76 55 5.58
60 4.31 60 5.04
65 4.02 65 4.54
70 3.53 70 4.08
75 3.05 75 3.66
80 2.66 80 3.27
85 2.36 85 2.91
90 2.10 90 2.59
95 1.94 95 2.31
100 1.57 100 2.04
- 105 1.81
110 1.61
115 1.42
120 1.27

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図 18.5.1.2: ANEギャップ試験キャリブレーションデータ

ANEギャップ試験キャリブレーションデータ