この試験は、通常の商業用包装品が到達しうる圧力下で、着火によって爆発的な激しさを伴う爆燃に達するかどうかを調べるために、密閉下で試料(注1)に点火した場合の影響を測定するために用いられる。
注1: 熱的に安定な活性液体(ニトロメタン《 UN 1261》など)を試験する場合は、試料が2度の圧力ピークを示すので、変動する結果が得られることがある。
11.6.1.2.1 時間/圧力試験装置(図 11.6.1.1)は長さ 89 mm 、外径 60 mm の円筒形の鋼製圧力容器から成る。相対する面を平面加工し(容器の横断面を 50 mm まで削る)点火プラグとガス抜きプラグを保持しやすくする。容器は直径20 mm の穴を開け、1"英国標準パイプ(BSP)に合うよう内側の端を 19 mm の深さまでねじ切りする。圧力測定用枝管は、容器の一方の端から35 mm の位置に、切削平面に対し 90°の角度で圧力容器の湾曲した表面にねじ込む。この受け口は 12 mm の深さまでくりぬき、枝管の端の1/2" BSP に合うようねじ切りする。気密シールを確実にするためにワッシャーを取り付ける。枝管は圧力容器本体から 55 mm 突き出ており、内径6 mm である。枝管の端はダイアフラム型の圧力変換器を取り付けられるようねじ切りする。高温ガスや分解生成物の影響を受けず、かつ 5 ms 以下で690-2070 kPa の圧力上昇に対応できるような圧力測定装置を用いる。
11.6.1.2.2 枝管から最も遠い圧力容器の端は2つの電極(片方はプラグ本体から絶縁され、もう片方はプラグ本体にアースされている)で取り付けられている点火プラグで密閉する。圧力容器のもう一つの端は厚さ0.2 mm 、破裂圧力約 2200 kPa のアルミニウム製破裂板(口径 20 mm の保持プラグで支えられている)で密閉する。確実に密封するために、両方のプラグに軟鉛ワッシャーを用いる。使用中装置が正しく機能するように支持台を設置する。(図 11.6.1.2)これは 235 mm×184 mm×6 mm の軟鋼性基板、長さ 185 mm の中空状の角筒 (S.H.S.) 70×70×4 mm から成る。
11.6.1.2.3 角筒 の一方の端から 86 mm の部分は箱型のまま残し、もう一方の端は、相対する2平面をもつ脚部となるようにカットする。これらの平面の端は、水平面に対し60°の角度で切断し、基板に溶接する。
11.6.1.2.4 幅 22 mm、深さ 46 mm の溝を角筒の上端の一方の側に作り、圧力容器装置を下げたとき、点火プラグの端が最初に箱形支持部の中に入り、枝管がこの溝にはまるようにする。幅 30 mm 厚さ 6 mm の鋼鉄製パッキング部品を、スペーサーとして箱形部分の内側表面下部に溶接する。7 mm のつまみねじを2個、反対側表面に打ち込み、圧力容器を適切な位置にしっかり固定する。幅 12 mm 厚さ 6 mm の鋼鉄製ストリップを2本、箱形部分底部に隣接する側面部に溶接して、圧力容器を下から支えるようにする。
11.6.1.2.5 点火システムは、通常、低圧雷管で用いられている型の電気式点火玉と、13 mm 角の火薬付き布(プライムドキャンブリック)から成る。等しい性能の点火玉も使うことができる。プライムドキャンブリックは、両面を硝酸カリウム/珪素/硫黄を含まない黒色火薬から成る火工剤でコーティングした、リンネル織物である(注2)。
注2: 英国での試験の詳細は、同国の連絡先から入手可能(付録4参照)。
11.6.1.2.6 固体の点火装置準備は、電気式点火玉の真ちゅう箔接触子を、その絶縁体から分離することから始める(図 11.6.1.3 参照)。絶縁体の露出部分は、切り離す。真ちゅうの接触子を使って点火玉を点火プラグの端子に取り付ける。このとき点火玉の先端が点火プラグ表面の 13 mm 上に来るようにする。13 mm 角のプライムドキャンブリックの中央に穴を開け、そこに取り付けた点火玉を通した状態で置く。点火玉をキャンブリックで包み、木綿糸で固定する。
11.6.1.2.7 液体試料については、点火玉の接触子箔の上に導線を固定する。次に長さ 8mm、外径 5 mm 、内径 1 mm のシリコンゴム管に導線を通して、図 11.6.1.4 に示すように管を点火玉の接触子箔の上まで押し上げる。プライムドキャンブリックで点火玉を包み、薄い一枚のPVC鞘、またはそれに相当するものを使ってキャンブリックとシリコンゴム管を覆う。鞘は、細いワイヤを鞘とゴム管の周りにきつく巻くことによって密封する。次に点火玉の先端が点火プラグの 13 mm 上にくるように、導線を点火プラグの端子に固定する。
11.6.1.3.1 装置は点火プラグの端を下にして組み立てる。圧力変換器を取り付けるがアルミニウム製破裂板はまだ所定の場所に取り付けない。5.0 g (注3)の試料を点火システムと接するように容器の中に入れる。容器を満たす時、5.0 g 入れるのに軽いタンピングが必要でなければ、普通はタンピングしない。軽くタンピングしても 5.0 g すべてを入れることができなければ、限界まで容器を満たした後、装填した試料に点火する。使用した試料の質量を記録する。鉛製ワッシャーとアルミニウム製破裂板を所定の位置に取り付け、保持プラグを固くねじ込む。試料を装填した容器を点火支持台に移し、破裂板を一番上に置き、適切な有毒ガス排出装置付き実験室または点火セル内に設置する。発破用発電機を点火プラグの外部端子につなぎ、試料に点火する。圧力変換器のシグナルを、時間/圧力推移の永続的な記録および評価ができる適切なシステムで記録する。(例えばチャート・レコーダーにつないだ一時的記録装置など)
注3: 予備的試験(炎中での加熱など)あるいは非密閉下燃焼試験(試験シリーズ3、タイプ(d) 試験など)で、急激な反応が起こることが予測される場合は、密閉下での反応の激しさがわかるまで試料の量を 0.5 g に減らす。0.5 g の試料を使うことが必要ならば、“+”の結果が得られるまで、または試験が 5.0 g の試料で行われるまで試料の大きさを徐々に増やす。
11.6.1.3.2 試験は3回行う。圧力が 690 kPa から 2070 kPa まで上昇するのにかかる時間を記録する。最も短い時間間隔を等級づけに利用する。
結果はゲージ圧力が 2070 kPa に達したかどうかによって解釈する。達した場合は、圧力が 690 kPa から 2070 kPa まで上昇するのにかかった時間で判定する。
達した最大圧力が 2070 kPa 以上の場合、結果は“+”、物質は爆燃能力を示したとみなされる。いずれか1回の試験でも達した最大圧力が 2070 kPa 未満の場合、結果は“-”、物質は爆燃の可能性を示さなかったとみなされる。発火しなかったからといって、必ずしもその物質が爆発性を持たないということにはならない。
物質 | 最大圧力 (kPa) |
690 から 2070 kPa への圧力上昇時間 (ms) |
結果 |
硝酸アンモニウム(高密度プリル) | < 2070 | - | - |
硝酸アンモニウム(低密度プリル) | < 2070 | - | - |
過塩素酸アンモニウム(2 μm) | > 2070 | 5 | + |
過塩素酸アンモニウム(30 μm) | > 2070 | 15 | + |
アジ化バリウム | > 2070 | < 5 | + |
硝酸グアニジン | > 2070 | 606 | + |
硝酸イソブチル | > 2070 | 80 | + |
硝酸イソプロピル | > 2070 | 10 | + |
ニトログアニジン | > 2070 | 400 | + |
ピクリン酸 | > 2070 | 500 | + |
ピクラミン酸ソーダ | > 2070 | 15 | + |
硝酸尿素 | > 2070 | 400 | + |
(A) | 圧力容器本体 | (B) | 破裂板押さえプラグ |
(C) | 点火プラグ | (D) | 鉛ワッシャー |
(E) | 破裂板 | (F) | 枝管 |
(G) | 圧力変換器用ねじ山 | (H) | 銅ワッシャー |
(J) | 絶縁された電極 | (K) | 接地電極 |
(L) | 絶縁体 | (M) | 鋼製コーン |
(N) | ワッシャー溝 |
(A) | 製造された状態の電気式点火玉 |
(B) | 絶縁カードから分離した真ちゅう箔端子 |
(C) | 絶縁カードの切り取り |
(D) | 中央に孔のある13 mm 角のプライムドキャンブリック SR252 |
(E) | 点火プラグのピンに接続した点火玉 |
(F) | 点火玉に取り付けたキャンブリック |
(G) | 筒状にして紐で縛ったキャンブリック |
(A) | 点火玉 |
(B) | PVC覆い |
(C) | 絶縁カード |
(D) | シリコンゴム製管 |
(E) | 点火用導線 |
(F) | 接触箔端子 |
(G) | 封止用針金 |
(H) | プライムドキャンブリック |